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「雲外蒼天」── 人生を支える言葉の力

コラム/[更新日]2025年11月9日

私の大好きな言葉に「雲外蒼天(うんがいそうてん)」という言葉があります。雲の外、青い天と書く蒼天。私が小さい時に祖父が「この言葉を覚えておくといいよ」と言って、渡してくれたその言葉を今日までずっと大切にしてきました。

どんなに大変なことがあっても、必ず努力をすれば、青空が美しく上にある。雲の上には必ず青空があって、みんなに等しく青空はあるんだよ。試練を乗り越えて努力をすれば必ず叶うよという意味なのです。

これをモットーに今後もずっと仕事をしていきたいと思っています。すごくつらくなる時もあるのですが、悩んでいる時は「いや、必ずこの雨は止むし、嵐も過ぎ去る。必ず今日のような晴天、小春日和の青空が広がる日が来る」と信じています。

私は40歳の時に腫瘍が見つかって、生死の境をさまよいました。治療中にかなり瘦せてしまって、「死ぬかもしれない。息子もまだ小さいのに、どうしよう」と思いました。でも、ここで死ぬわけにはいかない。絶対に自分の命は自分で守るんだと思って、お医者さんに救ってもらいながらも、自分の気持ち、メンタルを前向きにして、「絶対負けない!」という気持ちで病気と向き合いました。夢があったからです。

現在の私の夢は、「100歳まで生きて、100歳までに100冊の本を書く」ということです。私自身も医師に救ってもらった命を大切に、一日一日を過ごす。そうした生き方は障害がある人でもない人でも同じじゃないかと思うのです。

今では、大病をしたことで、「命」というものにしっかり向き合うことができたのは、私の財産だと思っています。

作品作りにおいても、この「雲外蒼天」の精神は生きています。拙著 絵本『四角い空の向こうへ』(晶文社)は、まさに「雲外蒼天」なのです。体は全く動かないけれど、お父さんがプレゼントしてくれた天窓の向こうには抜けるような青空があって、僕はその向こう側に羽ばたいていける。実際に主人公は羽ばたいていますよね。青い空を突き抜けた先には青空が広がっている。これがまさに「雲外蒼天」という意味です。

もしかしたらすれ違っている人にすごい苦しみを抱えている人がいても、ポンと「大丈夫だよ、私がそばにいるから」と言ってあげられるといいなといつも思います。本当に苦しい顔をして電車に乗っている人がたまにいるんですよね。何かものすごく苦しいことがあるんだなと思うと、もういてもたってもいられなくなります。

そんな時にこういう本を渡してあげたいなと。「自分だけじゃないんだよ、苦しいのは」って。

「雲外蒼天」──この言葉が、今日も私の歩みを支えてくれています。