Column
なぜ、私は絵本という表現方法を選んだのか
絵本の一番の魅力は「想像力の賜物」だということです。イマジネーション(想像)とクリエーション(創造)、どちらもできる──これが絵本の持つ無限の可能性なのです。
よく有識者も言われていることですが、絵と文があるだけでは絵本にはならないのです。絵と文があって、そこにもう一つ、読者の想像が加わって初めて「絵本」になると私は考えています。どんなに良い絵本でも、そこから発せられているメッセージを受け取る側の想像がなかったら、読者にとって、その絵本は、ただの絵と文になってしまいます。
だからこそ、絵本として完成させるために、想像しやすいように、読み手が感動できるように、共感できるようにということをすごく考えて、一冊一冊本を作っています。

私が絵本という表現方法を選んだ理由は、世の中の様々な社会問題を自分事にするというモットーがあるからです。少子高齢化の問題、環境問題、人権問題、貧困の問題、医療的ケア児など障がい者支援の問題、難民問題──そういったものが常に自分の中にありました。
世の中の社会問題をいったん自分事として受け止め、自分の言葉で考え方を発信していく。小さな子どもたちにも伝わる言葉で──彼らにも届けられる方法があるのではないかと考えたのです。
「絵本」という形にして発信すると、絵を見て、子どもたちは何かを感じます。そして文章を読めるようになったら、母親や先生方といった大人と一緒にその問題を考えていく。そういった機会を創出したいと思ったので、「絵本」の力で、「絵本」という媒体で伝えていこうと決めました。

絵本は情景も浮かびますし、文章も優しいので、すっと心に入ってくる。絵本には、読者に感じてもらう伏線がいろいろなところにあります。一度読んだくらいでは見えないものも直に見えるようになってくる。何回も何回も読むことが大切です。
大人も感動できる、子どもと一緒に時間を共有できる素晴らしい媒体である絵本というものを大切に、これからも日本の大切な文化財として、これを世界にもどんどん発信していきたいと考えています。